Vol.432
2022年11月14日 公開
11月14日は「いい石の日」。「11(いい)14(いし)」の語呂合わせと、石工職人が尊ぶ聖徳太子の命日のこの日を「太子講」としたことから制定されたそうです。
「石」といって思い浮かべるのは、石造りの教会として知られる長崎県新上五島町の頭ヶ島(かしらがしま)天主堂。1919年に完成した天主堂ですが、その物語は江戸時代後期までさかのぼります。
1797年、五島藩が大村藩に領民を土地開拓者として五島に移住させることを要請したのをきっかけに多くの潜伏キリシタンが新天地をめざして海を渡っていきました。そして頭ヶ島でも1859年頃から入植がはじまったのです。
1865年の「信徒発見」後は、外国人神父がひそかに五島を訪れていたのですが、その後、キリシタンの大規模な摘発事件「五島崩れ」が勃発。頭ヶ島の島民も一旦は捕らえられたものの牢から抜け出し、一時は島から脱出してしまったそうです。
やがてキリスト教が解禁されると、島には木造の教会が建てられ、その後、鉄川与助の設計、施工による現在の天主堂が建設されました。
島の周辺には石材に適した砂岩が広く分布しており、石材を使用することで建築費が抑えられることから信徒たちは自ら石を運び、一つずつ積み上げていったそうです。
教会の石壁には「四九五」や「三九五」など漢数字がいくつも刻み込まれています。
これは四尺九寸五分、三尺九寸五分といった長さを表したもので、作業する人たちのための共通の目印だったのではないかと思います。
生活費を切り詰めて建築費を捻出し、約10年という年月をかけて完成した頭ヶ島天主堂は、島民たちの固い絆によってつくられた信仰の証だったのでしょうね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)