おらしょ こころ旅

Vol.431

キリシタン洞窟

2022年11月7日 公開

コロナ禍になるまでは長崎県内にあるキリスト教関連遺産をよく訪れていました。

徒歩や公共交通機関で気軽に行くことができる場所には何度も出かけていたのですが、一方でタイミングが合わずに訪れることができなかった場所がいくつかありました。

そのひとつが新上五島町若松郷にあるキリシタン洞窟。船で渡るしか方法がないというのがその大きな理由だと思います。

1868年(明治元年)、五島市久賀島(ひさかじま)の牢屋の窄(さこ)を皮切りに起きた「五島崩れ」と呼ばれるキリシタン弾圧は若松地区周辺の集落にも及びました。

そこで里ノ浦地区の人々は船で行くことしかできない岬の洞窟に着目し、そこに身を隠すことにしたのです。

洞窟の入口は岸壁裏側の海岸からは見えにくい場所にあったのですが、ある日、朝食をつくるときに立ち上る煙が沖を通る船に発見され、役人に捕らえられて厳しい拷問を受けたそうです。

地元の観光物産協会が運営するウェブサイトには写真が掲載されていて、洞窟入口付近のごつごつとした岩のあいだには、信仰を守り続けた先人たちの鎮魂のために建てられた白い十字架とキリスト像が鮮やかな姿を見せています。

洞窟のある岬の途中には海の浸食によってできたハリノメンドと呼ばれる穴があり、そのシルエットが幼子イエスを抱く聖母マリアに見えるといわれています。

毎年11月には土井ノ浦教会の信者の皆さんを中心とした約100人が上陸してミサを行っているとのこと。若松港から船で15分。いつかは訪れてみたい場所のひとつです。

 

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

おらしょ通信一覧
トップ