Vol.422
2022年9月5日 公開
先週はイタリア出身の宣教師ジョヴァンニ・バッティスタ・シドッティをご紹介しましたが、今週も彼にまつわる話をもう少し。
シドッティは、もともとローマ教皇庁の法律顧問を務めていたのですが、実はローマにいたとき、すでに日本語を学びはじめ、清皇帝への特使に同行してアジアを訪れたこともあったそうです。
こういったことから、彼が非公式ながら日本に開国をうながす教皇使節だったのではないかと指摘する研究者もいるようです。
日本にやってきた船が彼のために建造されたものだったことや、新井白石とのやりとりのなかで、当時よくいわれていた「宣教師は日本侵略の尖兵(せんぺい)である」という認識を否定したことなどもそれを後押しする逸話として興味深いものがあります。
このときシドッティが持参していたのが、17世紀にイタリアで制作された聖母像「親指のマリア」(東京国立博物館所蔵)。
日本への潜入にあたって決して小さくはないこの聖母像を選んだのは、深い聖母信仰があったからだといえるかもしれません。
そして2014年には東京都文京区小日向の切支丹屋敷からシドッティの人骨が発見され、その頭蓋骨をもとに彼の顔が復元されたそうです。
どんな風貌だったのでしょうか。調べてみると、それは実直さと優しさに満ちた精悍な顔つきでした。
彼が本当に日本の開国を望む使節だったとしたら、この国にどんな未来を描いていたのでしょうか。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)