Vol.97
2016年5月9日 公開
本日掲載のこのコラムを、私は4月26日に書いています。熊本地震から10日以上が過ぎましたが、まだまだ余震が続いています。避難されている多くの皆さんに心よりお見舞いを申し上げます。
私たちが住んでいる土地は、法律的には誰かの所有になっていますが、つきつめていうと、大地から住処の場所を借りて私たちは暮らしているともいえます。
豊かな農産物や鉱産資源、温泉、美しい景観など、多くの恵みを与えてくれる大地ですが、地震や火山噴火、斜面崩壊などにより大きな被害をもたらすこともあります。
恵みへの感謝と災害への恐怖————。先人たちはこの二つの想いのはざまで生きてきたのです。人間の歴史は、まさに自然との共存の歴史といっても過言ではありません。
その一方で、争い、差別、迫害などといった人類がつくりだした悲劇の歴史も大地には刻まれています。
長く続いた権力者たちの争いや、執拗にくり返されたキリシタン弾圧、明治、大正、昭和の時代に起きた戦争など、日本の歴史もこれを物語っています。
そして今、その堆積した欲望や憎悪は、世界を揺るがす内戦やテロへと続いているのです。
人間同士がそんなことをしている場合ではない。自然と真摯に向き合い、共存していくだけでも大変なのに・・・。そんな声がどこからか聞こえてきそうです。
今日は5月9日。熊本地方に少しでも笑顔が戻っていることを願っています。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)