Vol.87
2016年2月29日 公開
美術館で絵画などをみていると、作品のなかに「無欲の美」を感じることがあります。
そこには、誰かに評価されたいとか、誰かを感動させたいとか、そんな想いさえも感じさせない純粋な精神が宿っているように思うのです。
混じり気のない赤ちゃんの眼をみたときの感覚に似ています。
池田勉さんの写真との出会いはまさにそれでした。そこに映しだされていたのは、時間をかけて築いた人や自然との関係性があったからこそ生まれた光景、まさに無欲の美しさでした。
「おらしょ—こころ旅」の小冊子のなかで池田さんはこう記しています。「キリスト教をめぐる歴史に強い関心を抱き、写真を通して伝えたいという強い思いに突き動かされた」と。
何度も同じ土地を訪れ、四季折々の自然や人々の暮らしにふれるなかで見つけたテーマ「キリシタンの歴史といま」。このウェブサイトの「フォト巡礼」では撮影時のエピソードを交えながら池田さんの作品を紹介しています。
そして明日3月1日(火曜日)から6日(日曜日)まで長崎県美術館で第19回池田勉写真展『長崎のキリシタン 潜伏と継承の祈り』が開催されます。かけがえのない一瞬を切り取った素晴らしい作品をこの機会にぜひご覧ください。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)