Vol.58
2015年8月10日 公開
「まず、あの星とあの星とあの星を結んで、次にあの星から右に4個くらいの星を結ぶと十字型になるよね。それからまわりの星をつなげていくとこういう具合に翼を広げて飛んでいるように見えてくるやろう?」。ときおりゼスチャーを交えながら友だちはその星座をおしえてくれました。
夏の代表的な星座のひとつ「はくちょう座」。レクチャーをうけたのがどこだったのかはおぼえていないけれど、あれは小学5年生の夏だったと思います。
そう言われればそう見えるような気がするし、いくらそう言われてもそうは見えないようにも思えたのですが、熱心に解説してくれる友だちに悪くて「見える」と言ったのでした。
Kくん、ごめんね、おとなになった今でもそれは僕にはとうてい「白鳥」には見えないのです。ただ、君におしえてもらったおかげで、その後、それが「南十字星」に対して「北十字星」と呼ばれることや、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に登場することを知りました。
また、つい最近知ったのですが、キリスト教では「キリストの十字架」とも呼ばれているそうです。やはり僕にはこっちのほうがしっくりきます。星を結ぶと十字型になるところまでは本当に納得していたのですから。
それからもうひとつ。今日8月10日は、キリスト教が禁止されていた時代のローマで、教皇の執事をしていたロレンツォという人が処刑された日だそうです。イタリアでは今宵の流れ星はロレンツォの涙だとされており、愛する人のために願いごとをするとかなうといわれています。
今夜はあのころを思い出して星をながめてみます。この世のどこかにいる君と、夏の夜空でつながっていることを感じながら・・・。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)