Vol.54
2015年7月13日 公開
教会を訪れると、入口近くのテーブルに催し物のお知らせなどと一緒に、手づくりのしおりが置かれていることがあります。
それは聖書の一節を記したものだったり、押し花をあしらったものだったり、教会によってさまざまですが、いずれにしてもそこには信者さんの想いが投影されていて、手にするとじんわり心が温かくなります。
同じものはほとんどないようで、そのなかから気に入ったものを1枚選んでわずかばかりの寄付を献金箱に入れる。それはちょっとだけ信者さんとのつながりを感じる瞬間でもあり、教会めぐりの楽しみでもあります。
持ち帰ったしおりはもちろん読みかけの本にはさんで使用するのですが、公園のベンチや電車のなかで本を開くたびに、訪れた教会の記憶がよみがえり、しばらく思い出に浸ることもあります。
五島市久賀島の牢屋の窄(ろうやのさこ)殉教地の入口には椿の花を描いた石のオブジェがありました。五島といえば椿、波に磨かれたつるつるの石も島ならではの素材。素朴で愛らしいそのカタチにひかれ、献金箱に100円玉を入れて気に入った小ぶりの石を手にしました。
小ぶりと言ってもそれなりに重さがあるので、さすがに持ち歩くことはないのですが、本棚の片隅においたその石を見るたびに、久賀島の美しい景色を思い出すのです。案内していただいたガイドさんの笑顔や、タクシーの運転手さんの飾らない人柄とともに・・・。
また、おじゃましますね。今度はどんなお土産に出会うのでしょうか。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)