おらしょ こころ旅

Vol.5

大砂嵐の挑戦

2014年7月28日 公開

7月13日に始まった大相撲名古屋場所は、横綱白鵬が13勝2敗で見事史上3人目、30回目の優勝を手にしました。その闘いぶりはまさに歴史に残る大横綱という印象を与えました。

また今場所は、二横綱、二大関を破って大関昇進への道を拓いた関脇豪栄道、嘉風や豪風といったベテラン力士、成長著しい平成生まれの力士たちの活躍が目立ちましたが、そのなかでも特に注目を集めたのがエジプト出身の大砂嵐でした。

場所中、彼は宗教上の理由で断食月(ラマダン)に入っていました。ラマダンは原則的に約1カ月間、日の出から日没まで飲食ができないというもの。当然、毎日の朝稽古や本場所への影響はあったのでしょうが、それでも鶴竜と日馬富士の二横綱に勝利するという金星をあげるなど大健闘! テレビの前での応援にもおのずと力が入りました。

彼の出身地エジプトといえば、世界遺産の考え方を生みだすきっかけともなった国。1960年代、ナイル川アスワン・ハイ・ダムの建設計画により、アブ・シンベル宮殿などヌビア遺跡が水没の危機に直面したとき、ユネスコが遺跡の保護を世界に呼びかけ、募金や多くの国々の協力によりアブ・シンベル宮殿を移築。これを機に1972年のユネスコ総会で世界遺産条約が成立し、1979年、ヌビア遺跡群は世界遺産に登録されたのです。

そんな古代文明の国エジプトから一人で日本にやってきて、次代を担う力士として頑張る大砂嵐。今場所は7勝8敗と残念ながら勝ち越しはできませんでしたが、これからも母国への誇りを胸に、さらに上位を目指してほしいものです。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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