Vol.496
2024年2月26日 公開
福岡県三井(みい)郡大刀洗(たちあらい)町に国の重要文化財に指定されている今村天主堂があります。
この地方でキリスト教の信仰が始まった時期は定かではありませんが、16世紀後半にはキリシタンの集団が生まれていたと伝えられており、長崎や天草同様、ここでも信徒たちは厳しい弾圧のなかでひそかに信仰を続けていました。
1865年2月、長崎では大浦天主堂の献堂式が行われ、同3月には浦上村の信徒たちがプティジャン神父に信仰を告白する「信徒発見」という歴史的な出来事がありました。
その後、浦上の信徒たちは仲間を探し始めるのですが、1867年2月26日、商売で御井(みい)郡を訪れたときに今村のキリシタンを発見。以後、交流を図りながら信仰を守り続けてきたそうです。
現在の今村天主堂は1908年に本田保神父によって計画され、1911年に着工、1913年に完成しました。
彼は長崎浦上の出身で14歳のときに「浦上四番崩れ」の弾圧によって母と妹と三人で高知に流配されました。
そして飢えや病に苦しむなか、宣教師になることが自らの使命であると考え、脱出して神戸に渡り神学校で学んで司祭となり、1896年に主任司祭として今村に赴任。教会堂建設のための寄付や拠金集めに奔走したそうです。
今村天主堂の設計、施工は、田平天主堂や青砂ヶ浦(あおさがうら)天主堂など、多くの教会建築を手がけた鉄川与助。天主堂の前庭には本田保神父の胸像が設置されました。
浦上と今村のつながりを示す信仰の物語です。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)