Vol.494
2024年2月12日 公開
2月の代表的な花木といえば椿(つばき)。
椿はキリスト教との関わりも深く、五島列島の多くの教会のステンドグラスや天井などに椿の花の意匠が施されていることや、潜伏キリシタンが伝えてきた「マリア十五玄義図」に白い椿が描かれていることはこのコラムでもご紹介しました。
椿の花はとても愛らしくて魅力的ですが、艶のある深緑の葉を見ると、なんだか寒さなんかに負けていられないと背筋が伸びるような気がします。
そして椿と並んで初春を彩る花木として知られているのが梅ですね。
梅はバラ科サクラ属の落葉高木で原産地は中国。日本には弥生時代に朝鮮半島を経て渡来した、あるいは遣唐使が持ち込んだなどといくつかの説があるようですが、いずれにしても歴史ある花木として万葉集にも詠われています。
花言葉は忠実、高潔、忍耐。学問の神様 菅原道真が詠んだ歌「東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ」に由来するといわれ、主人を想う梅の花は京都から太宰府まで一夜で飛んできたと伝えられています。
数年前、西海市の小高い丘にあるキリシタン墓碑を訪れたとき、道すがら民家の庭に咲くしだれ梅を見つけました。
天から舞い降りてきたような可憐な花が風に揺れる様は美しく、しばらく見入ってしまったのでした。
梅の名所を訪れるのもいいですが、「世界遺産巡礼の道」のマップを片手に歩きながら、家々に咲く梅の花を楽しむのも一興かもしれませんね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ