Vol.482
2023年11月13日 公開
11月13日は「うるしの日」。平安時代前期、文徳(もんとく)天皇の第一皇子が京都のお寺に籠もっていたとき、菩薩様にうるしの製法や漆器の作り方を伝授されたのがこの日といわれていることから制定されたそうです。
日本の漆器の歴史は古く、北海道にある縄文時代の遺跡から朱漆(しゅうるし)を使用した装飾品が発見されていることから、日本がうるし発祥の地ではないかといわれています。
うるし工芸品は時代を追うごとに進化し、やがてきらびやかな蒔絵(まきえ)を施した調度品もつくられるようになり、大航海時代に海を渡ってきたヨーロッパ人たちはその美しさに魅了され、多くの漆器を自国に送ったそうです。
ヨーロッパに輸出された漆器のうち、ポルトガル人の渡来から鎖国時代までのものは「南蛮漆器」、鎖国時代のものは「紅毛漆器」と呼ばれており、イエズス会の宣教師たちの要望に応えてつくられた南蛮漆器もあったようです。
スペインの教会や修道院にはこの南蛮漆器がのこっているところもあるらしく、それらは主に布教の道具として使われたのではないかと推測されています。
また、ルイス・フロイス著の『日本史』のなかには織田信長の「安土城」についての記述があり、そのたたずまいや座敷内部の素晴らしさに加え、赤いうるしが塗られた木柱の見事さにもふれているとのこと。
今や日本を代表する伝統工芸品の一つである漆器。ちょっと気の早い話ですが、正月に食べる雑煮はやはり漆器のお椀でいただきたい。そんなことを思ってしまう「うるしの日」です。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)