Vol.481
2023年11月6日 公開
10月初旬の地元紙に、しばらく途絶えていた洗礼式(お授け)が五島市の奈留島で行われたという記事が掲載されていました。
洗礼式は実に51年ぶりのことで、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界遺産登録5周年にあわせて行われたプロジェクトの一つだそうです。
儀式では洗礼を授ける水方(みずかた)や、暦をつくる帳方(ちょうかた)などの三役を潜伏キリシタンの子孫の方々が、父親役となる抱き親を男子中学生が務めたとのこと。小さな子どもを抱きかかえる中学生の姿がとても印象的でした。
水方がオラショを唱え、洗礼を受ける子どもに聖水をかけるなど、儀式は1時間ほど行われ、その様子は動画で記録されたそうです。
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は城郭跡や集落、教会など12の資産で構成されていますが、今後はこういった有形文化財の保存に加え、この洗礼式のような伝統行事の継承もますます重要になってくるのではないかと思います。
岩からしみ出す水を聖水とする平戸市中江ノ島(なかえのしま)の「お水取り」の儀式、江戸時代の禁教下で布教活動を行った外国人宣教師サン・ジワンらを慰霊する長崎市外海(そとめ)地区の枯松(かれまつ)神社の神社祭・・・・・・。
受け継がれる儀式や祭事のなかに伝統を守る人々の厚い想いを感じます。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)