Vol.479
2023年10月23日 公開
日本の秋の風物詩といえば月見。よく知られているのは仲秋の名月、いわゆる十五夜(今年は9月29日)ですね。
月見の風習が庶民に広がったのは江戸時代。月は陰の象徴であり「お陰さま」に通じることから作物に感謝する意味も込めて月見をするようになったといわれています。
十五夜以外にも月見は行われているようで、たとえば今週末10月27日の十三夜(じゅうさんや)は十五夜に次いで美しい月とされ、栗や豆の収穫期にあたることから栗名月、豆名月とも呼ばれています。
月見のほかにもかつては月を信仰の対象とし、十五夜、十九夜、二十三夜など特定の月齢に仲間が集まり、月を拝んで夜を明かす月待(つきまち)の行事も行われていました。
これは16世紀頃に京都の公家社会で始まったものらしく、年齢、性別、特定の職業や宗教など集まる仲間の基準は様々で、神道や仏教の月待ではそれぞれ崇拝する掛け軸を飾っていたようです。月の満ち欠けが人々の生活に深く関わっていたのですね。
禁教期、表向きは神社の氏子となってひそかに信仰を続けていた潜伏キリシタンたち。
彼らもまた月待の行事に参加し、美しい月にマリアの姿を思い描きながら祈りを捧げていたのかもしれませんね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)