Vol.471
2023年8月28日 公開
8月28日は「ヴァイオリンの日」。1880年(明治13年)のこの日、東京深川の三味線職人松永定次郎が国産ヴァイオリン第一号を完成させたことから制定されました。
当時まだ若かった松永は、都内に住む外国人音楽家が所有するヴァイオリンから図面をおこし、材料不足のなか代用品を活用して完成させたそうです。
現在、ヴァイオリンの弦はスチール弦やナイロン弦が主流のようですが、松永がつくった当時のヴァイオリンの弦は材料不足などもあって三味線と同じ絹糸だったかもしれませんね。
ヴァイオリンは、中東を中心としたイスラム圏で使用されていた弦楽器が起源であるといわれており、16世紀中頃のイタリアで誕生したと考えられています。
天正遣欧使節の4人の少年たちが長崎港からローマに向けて出発したのが1582年、ローマ教皇に謁見したのが1585年、そして1590年に帰国して翌年、豊臣秀吉に謁見しました。
そのとき演奏したのはリュートやヴィオールといった古楽器だったのですが、ちょうどこの頃イタリアではヴァイオリンがさかんに製作されていたようですから、彼らもこの新しい楽器の音色をすでに耳にしていたのかもしれません。
日本で西洋音楽が浸透し始めたのは、1879年に政府が音楽取調掛を設置して以降のこと。国産ヴァイオリン第一号が完成する前年のことでした。
それからは演奏人口も急速に増加し、国際的に活躍する多くのヴァイオリニストが誕生しているのです。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)