Vol.458
2023年5月29日 公開
5月29日は、詩人として知られる野口雨情の生誕日。1882年、野口雨情は茨城県で廻船問屋を営む名家の長男として生まれました。
高等小学校を卒業後、上京して東京専門学校(現在の早稲田大学)に入学。坪内逍遙に師事しますが、一年ほどで中退して詩作を始めたそうです。
その後、事業を興して失敗したり、北海道で新聞記者として働いたりするなど、紆余曲折の人生を経て詩壇に復帰。童話雑誌「金の船」で数々の作品を発表しました。
「十五夜お月さん」「七つの子」「赤い靴」などは、子どもの頃によく口ずさんだという人も多いでしょうね。その代表作のひとつが「シャボン玉」です。
〜シャボン玉 飛んだ 屋根まで飛んだ 屋根まで飛んで こわれて消えた シャボン玉 消えた 飛ばずに消えた 生まれてすぐに こわれて消えた 風 風 吹くな シャボン玉 飛ばそ〜
この詩にはシャボン玉で遊ぶ子どもの様子が描かれていますが、一説には夭折(ようせつ)した子どもへの鎮魂歌ではないかともいわれています。当時はさまざまな事情で亡くなる子どもが多かったのでしょう。
長崎市外海地区に「子捨川(こすてごう)」という場所があります。
かつて外海地区は農地が少なく、領民たちは貧しい生活を強いられていました。
そんななか大村藩は、人口抑制として長男だけをのこす「間引き」を強要。厳しい取り締まりの末に、領民たちは泣く泣く長男以外の子どもを子捨川に投げ落としたといわれています。
キリシタンの五島移住のきっかけにもなったというこの悲劇。五島に向かう際、領民たちは子捨川に船を寄せ、手を合わせて出発したといわれています。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)