Vol.398
2022年3月21日 公開
3月21日は二十四節気のひとつ「春分の日」。
この日を境に昼がだんだんと長くなり、夜が短くなる季節の節目として、昔から人々は自然に感謝し、春の到来を祝ってきました。
一方、この日は、1612年に江戸幕府が直轄領にキリシタン禁教令を発令した日。禁教令は翌年には全国に拡大していきました。
木々が芽吹き、鳥たちが歌い、すべての命が輝き始める季節に信徒たちは言いようのない恐怖と不安を抱え、冬の時代を迎えようとしていたのでした。そしてこの冷酷な時代はその後2世紀以上も続いたのです。
このままキリシタンが増え続けると、いずれこの国は征服されてしまう。そうなる前に信仰を禁止しなければ・・・。
禁教令はキリスト教の勢力拡大に脅威をおぼえた為政者の恐怖心の表れだったのでしょう。自らを脅かすものをすべて力で制してきた彼らにとってそれはごく当たり前の決断だったのだと思います。
やがてこの傲慢な姿勢は時代を経てもなお増殖するように広がり、今度は異なる文化を持つ人々への差別へと向かっていったのでしょう。
3月21日は、1966年の国連総会で制定された国際人種差別撤廃デー。春を感じる日はどうやら自由と平和を考える日でもあるようです。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)