Vol.397
2022年3月14日 公開
もう2年も続いているマスク生活。先日、ある仕事のスタッフが異動で担当を離れることになり、わざわざ挨拶に来てくれました。
会うたびにマスク姿だったこともあり、最後にお互いの顔を確認しようとマスクを外してみました。
彼の顔はいつも見ていた優しそうな目の印象そのままの穏やかな表情でした。一方、彼の目に私の顔がどのように映ったのかはわかりませんが、一瞬見せた微妙な笑みが少々気になったのでした。
ある民間の調査によると、マスクを外した素顔を世間に見せたくないという理由からコロナ後もマスクを着用したいと回答した人はかなりの数にのぼるそうです。なんだかわかるような気もします。
日本でマスクが予防品として注目されるようになったのは大正時代。スペイン風邪の大流行がきっかけだったようです。
しかし、それ以前に疫病対策として布などで顔を覆う習慣があったとしたら、潜伏キリシタンたちも迫害の恐怖から生じる不安な表情を隠すことができたかもしれませんね。
マスクで顔を覆うことが自己防衛につながり、コンプレックスや自信のなさをカバーできるという考え方が定着したらどうなるのでしょうか。
コロナ後もマスク生活を続ける人が多くなり、顔全体が把握できない人が増えていくという、なんともミステリアスな世界に突入しそうな気もするのです。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)