Vol.391
2022年1月31日 公開
「沈黙」という小説や映画を通して作家 遠藤周作を知った人は多いでしょうね。私も中学か高校の国語の教科書のなかにあった同名の小説が彼を知るきっかけでした。
当時は満足な解釈もできず、疑問ばかりが頭の中で雲のようにぷかぷかと浮かんでいるようでした。
以前、このコラムでもご紹介しましたが、遠藤氏は12歳のときにカトリック教会で洗礼を受け、大学卒業後、フランス留学を経て批評家として活動を開始。1955年頃から小説家として脚光を浴びるようになりました。
代表作の「沈黙」のほか、「海と毒薬」や「深い河」も映画化されたのでご覧になった方もいらっしゃるでしょうね。
「日本人とキリスト教」をテーマに作品を書き続けた遠藤周作。昨年暮れ、その未発表作品が長崎市の遠藤周作文学館で見つかったという記事が地元紙に掲載されていました。
発見されたのは3つの戯曲で、戦争とキリスト教を題材にしたもの、主人公を現代のイエスとして描いたもの、そして表向きは禁教政策に従いながらも信仰を貫いたキリシタン大名の話など、どの作品にも一貫したテーマが息づいているようです。
今回の作品は文学館が所蔵する膨大な原稿資料のうち、未調査の500点のなかから見つかったそうですから、今後の調査によってはまた新たな作品が発見されるかもしれません。
3つの作品は現在開催中の没後25年記念企画展で公開されており、今後、文芸誌への掲載や単行本化も予定されているそうです。楽しみですね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)