おらしょ こころ旅

Vol.39

春のエール

2015年3月30日 公開

ひと月ほど前、ある新聞に、幕末から明治初期のキリシタン弾圧「浦上四番崩れ」で、津和野藩(島根県)に流されて殉教した浦上キリシタンを聖人に列するため、カトリック広島司教区が運動を始めたという記事が掲載されていました。

浦上四番崩れ──。それは、1865年3月17日の信徒発見後に起きた浦上キリシタンの大検挙事件。亡くなったキリシタンの埋葬を僧侶の立ち会いなしに行ったことがその発端だといわれています。

明治政府は、1868年から1870年にかけて浦上のキリシタン約3,400人を、北は富山から南は鹿児島まで全国20藩22ヵ所に移送。津和野には153人が流されました。

浦上の信徒たちが「旅」と呼んだこの流配から帰村したのは、キリシタン禁制の高札撤廃後の1873年4月から6月にかけて。しかし、浦上村に戻った彼らのなかには家や財産がない者も多く、その後も苦しい生活が続いたそうです。

見知らぬ土地に流され、厳しい拷問に耐えながら信仰を守り続けた彼らの姿が、時を超え宗教を越えて、どんな困難なときも自分を信じ、希望を持って生きることの大切さをおしえてくれます。

4月は旅立ちのとき。生まれたての夢をその胸にしっかりと抱き、自分の信じた道をまっすぐに歩いてほしい──。春の明るい陽射しのなかでひとり青春時代を振り返りながら、若い人たちに小さなエールをおくる自分がいました。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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