おらしょ こころ旅

Vol.386

馴染みの理髪店

2021年12月20日 公開

30年以上通っていた理髪店が今年いっぱいで閉店することになり、先日最後の散髪に行ってきました。

店舗が入っているビルの建て替えと、ご主人が高齢であることが店じまいの理由だそうですが、気の良いご主人に加え、店を手伝っていた奥さんやスタッフの皆さんとも仲良くしてもらっていたので寂しくて残念な想いでいっぱいです。

月に一度通ったとして360回以上。人生における理髪店の存在の大きさにあらためて驚かされます。

髪を切る理髪業が日本でスタートしたのは明治時代以降で、それ以前は髪を結う「髪結い」が活躍していました。

その頃の髪型は、月代(さかやき)といって前頭部から頭頂部にかけて頭髪を剃りあげ、残りの頭髪で髷(まげ)を結う、いわゆる「ちょんまげ」が一般的だったそうです。

元々この髪型は合戦で兜(かぶと)をつける武士たちの頭が蒸れないようにするために考案されたもので、しだいに一般庶民にも広がっていきました。

しかし、なかには月代を剃らずに後頭部に小さな髷を結ったり、ただ髪を束ねたりしただけの人もいたようです。

京都から長崎へと連行される二十六聖人の道行きの絵や、長崎の西坂で55人が殉教した元和の大殉教の図、川原慶賀が描いた絵踏みの風景などの史料をみると、当時の町人やキリシタンの髪型がわかると思います。

若いときは流行の髪型にこだわって注文をつけたり、中年になってからは目立ってきた白髪のことを相談したり、さらに仕事の悩みや愚痴を聞いてもらったり、いろいろとお世話になった馴染みの理髪店。ご主人、奥さん、スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。

さて、来年からはどのお店にお世話になろうかな。すっかり薄くなった後頭部に手をあてながら思案する日々が続きそうです。

 

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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