Vol.373
2021年9月20日 公開
今日は敬老の日であり、「彼岸」の入り。そして23日は彼岸の中日「秋分の日」です。
彼岸とは、もともと仏教の言葉で煩悩を脱した悟りの境地のこと。
三途の川をはさんで私たちが住んでいる「此岸(しがん)」と、仏の世界である彼岸が最も近くなるため、先祖を供養すれば自分も極楽浄土に到達できるという考えから墓参りが定着したのではないかといわれています。
彼岸の頃に墓地や田畑のまわりでよく見かける花といえば彼岸花。
別名「曼珠沙華」とも呼ばれ、サンスクリット語で「天界に咲く花」という意味があるそうですが、一方で「幽霊花」や「地獄花」など、死を連想させる異名を持つ不吉なイメージの花でもあるのです。
特に球根に毒性の強い成分を含んでいることから、誤って口にすれば呼吸困難やけいれんを引き起こすこともあるとのこと。
そういったことから先祖代々の墓や田畑をモグラやネズミ、害虫などに荒らされないようにするために植えたのではないかともいわれています。
今日から週末にかけてお墓参りにでかける方も多いのでしょうね。
県内の高台や丘陵地に設けられた墓地には仏教式のお墓が数多く立ち並んでいます。そんななか、かつて潜伏キリシタンが暮らした集落跡には十字架をあしらった墓石のほか、小石を集めて積んだものや、野石を伏せただけの素朴なお墓が残されています。
彼岸は仏教の行事ですが、厳しい弾圧を逃れながら生き抜いた潜伏キリシタンに想いを馳せるとき、先祖を敬い、この世に生かされていることに感謝するという彼岸の本来の意味が、宗教を超えた真理として心に響いてきます。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)