Vol.368
2021年8月16日 公開
昨年同様、今年も規模を縮小して行われた精霊流し。例年のような賑やかさはないものの、故人を西方浄土に送る風情ある伝統行事はやはり心に染みるものがあります。
お盆が過ぎると長崎っ子の関心は「長崎くんち」へと向かうのですが、こちらも昨年に引き続き中止となり、寂しい秋を迎えることになりそうです。
長崎くんちは、長崎市にある諏訪神社の秋の大祭。長崎ではそのほかの神社でも郷(さと)くんちが行われ、季節を告げる風物詩として地域の人々に親しまれています。
かつて地域コミュニティの核としての機能を担ってきた神社。しかし近年、人口減少などによってその機能は薄れつつあるようです。
自らの暮らしを振り返ってみても、神社を訪れるのは正月の初詣かお祭りのときくらい。手を合わせる機会も少なくなりました。
神社といえば、日本固有の宗教である神道の祭祀施設ですが、キリスト教文化が息づく長崎県にはキリシタンとの関わりが深い神社がいくつかあります。
たとえば、長崎市外海地区大野集落にある大野神社、辻神社、門神社、五島列島北部に浮かぶ野崎島の沖ノ神嶋神社など。
これらは禁教期に潜伏キリシタンが表向きは氏子となって信仰を続けた神社。つまりキリスト教が神道と信仰の場所を共有したことを物語る貴重な神社でもあるのです。
また、日本人指導者バスチャンの師サンジュワンをまつっている長崎市下黒崎町の枯松神社や、以前ご紹介した長崎市の淵神社内にある桑姫神社などは全国的にも珍しいキリシタン神社としてしられています。
感染症の影響もあってか、なんとなく足が遠のいてしまった神社。キリシタンの歴史という視点で訪れてみるのも興味深いかもしれません。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)