Vol.35
2015年3月2日 公開
小学生のとき、給食が終わると、クラス全員の机を教室の後ろに移動して掃除をしていました。しかし掃除が始まっても、机と机のあいだの狭い空間に座ったまま食器を見つめている同級生がいました。
野菜が嫌いな子、コッペパンや脱脂粉乳が苦手な子・・・。彼らは給食の時間が過ぎてもそれぞれの食材と格闘していたのです。そんななか、肉だけを残している子どもたちもいました。同級生にそのことをたずねると、「カトリック信者の人たちは金曜日には肉を食べんらしかよ」とのことでした。
休み時間が終わり教室に戻ると、みんなは何もなかったように席に座っていました。あの子たちはどうやってその場を切り抜けたのか、泣きながらでも飲み込んででも食べてしまったのか、しばらくそのことが気になっていました。
旧友たちに給食の思い出をきくと、脱脂粉乳がまずかったとかそうでもなかったとか、学校を休んだ同級生には近所の子がパンを届けていたとか、ほほえましいエピソードばかりで、金曜日に肉を食べなかった同級生のことはおぼえていませんでした。
戦後の食糧難から子どもたちを守り、その成長を支えてきた学校給食。現在のメニューは当時とは比べられないほど充実しています。だからこそ、おいしい給食を味わえる幸せをかみしめてほしい、そして何よりも学校給食の楽しい思い出をたくさんつくってほしいと思うのです。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)