Vol.317
2020年8月24日 公開
子どもの頃、田舎の親戚の家に泊まったとき、五右衛門風呂に入ったことがあります。
湯に浮いた板を足で踏みながら釜の底まで沈めて入り、身体が釜にふれないよう膝を抱えてじっと体操座りをしていたのを覚えています。
五右衛門風呂の「五右衛門」は、安土桃山時代の大盗賊、石川五右衛門のこと。街なかを荒らし回っていた五右衛門がついに捕らえられ、京都の三条川原で釜茹での刑にされたことからこう名付けられました。
実は今日8月24日は、石川五右衛門が処刑された日だそうです。
彼が実在したかどうかは従来から疑問視されていたそうですが、イエズス会の宣教師の日記にその人物の存在を思わせる記述か見つかっていることから実在したのではないかといわれています。
江戸時代に歌舞伎や人形浄瑠璃の題材となった石川五右衛門は、現代でも映画化やドラマ化されていますし、人気のアニメ「ルパン三世」に13代目の石川五ェ門が登場するなど、馴染みのあるキャラクターなのでご存じの方も多いでしょうね。
石川五右衛門が受けた釜茹での刑と同じように、日本でキリスト教が禁止されていたある時期には改宗を迫るために雲仙地獄の煮えたぎる熱湯が使われました。
熱湯につけて引き上げる–––これを何度も繰り返し、拷問は10日 から1ヵ月にわたって続けられたそうです。人間とは思えない非道な行為ですね。
最近はとんと見かけなくなった五右衛門風呂ですが、いろいろと調べてみると専門店もあり、釜を購入して自分で設置する人もいるとか。
ま、そこまでする余裕はありませんが、機会があればもう一度入ってみたい五右衛門風呂。子どもの頃に感じたあの地獄のような熱さを今はどのように感じるのでしょうか。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)