Vol.288
2020年2月3日 公開
池波正太郎の代表作のひとつ『鬼平犯科帳』。数十年前にテレビドラマ化されて人気を博し、今でも時々再放送されているのでご存じの方も多いでしょうね。
「犯科帳」とは、江戸時代の長崎奉行所の判決記録のこと。1666年から1867年までの事件が原本145冊に収録されているそうです。
現在は長崎歴史文化博物館に所蔵されており、当時の世相を反映した貴重な資料として国の重要文化財にも指定されています。
主な事件は盗みや抜け荷(密貿易)で、キリシタンの摘発事件についてはその多くが証拠不十分で釈放されているのですが、一方でキリシタンを装った虚偽事件はいくつかあったようです。
兄によって薩摩金山を追われた弟が腹いせに兄をキリシタンだと訴えた事件では、審議の結果、噓だとわかり弟は磔(はりつけ)になりました。
また、お金がなくて熊本から長崎に帰る旅費を浮かそうとした男の場合は、宗門について長崎奉行に訴えたいことがあると申し出て長崎に護送されたものの、これも噓がばれて五島に流罪になったそうです。
どちらも想像以上に重い罪ですが、それだけに噓が厳しく罰せられた時代だったといえるのでしょう。
長崎歴史文化博物館の御白洲(おしらす)では、ボランティア劇団による寸劇が披露されており、上演回数は開館以来すでに8千回を超えたとのこと。
芝居の最後では出演者と観客が一緒になって「一件落着!」と叫ぶのですが、このときばかりは胸がスーッとして気持ちも晴れやかになります。
機会があればぜひ体感してみてください。大岡越前や遠山の金さんになった気分でね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)