Vol.275
2019年10月28日 公開
以前、雑誌の取材で平戸市を訪れたとき、冨春園という日本最初の茶畑があることを知りました。
1191年、臨済宗の開祖栄西が宋から帰国した際、持ち帰った茶の種を最初にまいた場所らしく、栄西はその後、福岡県と佐賀県との境にある脊振山に茶園を開いたと伝えられています。
平戸藩主松浦鎮信が鎮信流という茶道の流派をおこしたこともこうした歴史が影響しているのかもしれませんね。
平戸は、1550年にフランシスコ・ザビエルが来航してキリスト教を布教した地であり、禁教期にはキリシタンたちが潜伏して独自の信仰を貫いたことでも知られています。
とくに春日集落の潜伏キリシタンは、禁教初期にキリシタンの処刑が行われた中江ノ島や、キリスト教が伝わる以前から山岳仏教信仰の対象であった安満岳などを拝むことによって信仰を実践したそうです。
このような固有の信仰形態が評価され、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産となった平戸の聖地と集落(春日集落と安満岳、中江ノ島)。
残念ながら中江ノ島に上陸することはできませんが、それでも島の周遊クルーズを楽しんだり、春日集落や安満岳を訪れたりする人々が増えてきているようです。
昨年4月、春日集落には古民家を改装して作られた案内所「かたりな」がオープン。住民の方が語り部として常駐し、訪れた人のためにお茶などを提供しているそうです。
お茶といえば、10月31日は「日本茶の日」。冒頭に紹介した栄西が宗からお茶の種を持ち帰ったことに由来しているとのこと。
そんな歴史にもふれながら、のんびりと春日集落の秋を楽しむのもいいですね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)
長崎県平戸島の西岸にある。【登録資産グループ/平戸の聖地と集落】
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