Vol.243
2019年3月18日 公開
今日は彼岸の入り。春分の日の21日、あるいは週末にお墓参りを予定している人も多いかもしれませんね。
仏教ではご先祖様がすむ世界を「彼岸」、私たちがいるこの世界を「此岸(しがん)」というそうです。
彼岸は、人間の迷いや苦しみの原因となる煩悩に打ち勝ち、悟りの境地に達することができるように修行を積む期間ともいわれています。
墓前でご先祖様に手を合わせるのは、生きている人間がいつの日か無事に彼岸にたどり着けるように祈る意味もあるようです。
長崎のお墓にはいくつかの特徴があります。
その一つが墓石に彫られている「○○家先祖代々之墓」などの金色の文字。
これは、迷いでた霊が人にいたずらをしないよう金を燃やす中国盆に由来しているそうです。そういえば中国盆では金山、銀山などを燃やして米饅頭を天に向けて投げ、霊を送るという行事がありますね。
また、他県に類を見ないものとしては、長崎の人が「つちがみさま」と呼んでいる「土神様」が墓石の横にまつられていること。土地は神様から借りているものという感謝の気持ちが形となったものだと思われます。
そして三つ目はキリシタン墓地が多いこと。仏教式の墓とともに十字架をあしらった墓石が数多く立ち並んでいる光景も長崎ならではですね。
山などから運んだ自然石を置くだけの簡素な墓や、キリシタン様式の墓碑に仏教の戒名を刻んだものなど、県内には珍しいキリシタン墓碑も残っています。
機会があったら訪ねてみませんか。知らなかった物語に出会えるかもしれません。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)