おらしょ こころ旅

Vol.236

平和を心の中に築く

2019年1月28日 公開

昨年、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されて以来、長崎県には多くの観光客が訪れています。

観光客の増加は大きな経済効果を生み出すことから、構成資産のある市や町では観光客の受け入れのための施設整備や人材の育成に取り組んでいます。

しかし一方で、大切な祈りの場である教会堂での見学マナーが充分に守られていないことなどが課題となっているようです。

世界遺産は、観光施設ではなく、世界の人びとが過去から未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産。

国や地域、時代や世代、さらに価値観を越えて大切に守り受け継いでいくべき世界の宝物です。

ユネスコは創立以来、“平和を人の心の中に築く”という理念のもと、教育、科学、文化などの分野で様々な活動を行っています。

そのひとつが世界の文化遺産や自然遺産の保護なのです。

世界遺産を通してその国の文化に興味を持つようになると、知らなかった人たちとの会話が生まれる。そして相互理解が深まれば戦争が起こることはない。

世界遺産の保護活動はそんな考え方に基づいているといえます。

世界遺産への登録は決してゴールではなく、世界遺産を恒久的に保護する活動、義務、責任がそこからスタートしたということ。

観光客の増減に一喜一憂するのではなく、開発や紛争から世界遺産を守ることが国際平和につながることを改めて多くの皆さんに知っていただきたいと思います。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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