Vol.231
2018年12月17日 公開
大航海時代、ポルトガルが貿易の利益を求めてアジアに進出すると、キリスト教の宣教エリアも広がり、やがてイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルによって日本にもたらされました。
貿易船によって莫大な利潤がもたらされた日本では、寄港地を抱える地方領主が率先して洗礼を受け、それに続いて領民が改宗することでキリスト教は広く浸透していきました。
領民の改宗は領主の命令だったのでしょうが、その後、統一政権が確立し禁教時代に突入してからも民衆の信仰は途絶えることはありませんでした。
なぜだったのでしょうか。
貧しくても心の安寧を得ることができたからかもしれません。信徒が強い絆で結ばれた信仰組織に活路を見いだしたからかもしれません。先祖代々続く信仰を受け継いでいく使命を感じていたからかもしれません。
すべては推測の域をでませんが、手をあわせて祈る行為の中に汚れのない美しい心を見つけたことは間違いないような気がします。
神社やお寺、教会などで手をあわせて祈る人々の姿を今でもよく見かけます。
自分だけではなく多くの人々の幸せや、世の平安を願うその美しい心は、時代を超え、宗教を越えて受け継がれていくのだと思います。
「きれいごとを言っても世の中は変わらない」などとよく言われますが、きれいごとを言い続けなければ、まともな世の中をつくることはできないような気がします。
とくに2018年はそう思った年でした。
今年もあと2週間あまり。改めてこの1年を振り返り、美しい心を忘れることなく2019年を迎えたいと思います。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)