おらしょ こころ旅

Vol.227

リンカーンの演説

2018年11月19日 公開

今日は、1863年にアメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンが、ペンシルベニア州ゲティスバーグにある国立戦没者墓地の奉献式において演説を行った日です。

「人民の 人民による 人民のための政治」という一説は皆さんよくご存じですね。

南北戦争が長期化する中、同年7月1日から3日にかけて起きたゲティスバーグの戦いでは、両軍あわせて4万5千人以上の人々が死傷したといわれています。

戦没者を追悼するこの式典で行われたリンカーンの演説は、当時アメリカで最大の弁論家といわれた人物の長いスピーチのあとに行われたもので、時間にして約2分。沈痛な低い声で行われたそうです。

当時はマイクロフォンがなかったため、彼の演説にはほとんどの人が注目しなかったようですが、これを書き留めていた記者が記事にしたことから一躍有名になりました。

それは「人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させないために、われわれがここで固く決意することである」という民主主義の基礎を主張したものでした。

1863年といえば大浦天主堂が完成する2年前のこと。パリ外国宣教会のフューレ神父とプティジャン神父が横浜から長崎にやってきた年です。

キリスト教禁教の高札が取り除かれるまではここからさらに10年を要するのですが、それでも時代は大きく動き始めていたのでしょう。

リンカーンの有名な一説は日本国憲法草案前文にも盛り込まれたそうです。

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。

1946年、民主主義のあるべき姿が日本に示された瞬間だったといえるのかもしれません。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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