Vol.222
2018年10月15日 公開
数年前に行った場所がこの時期になるとなぜか懐かしく思い出されます。
訪れたのは春だったのにどうして秋に・・・。それは季節がもつ「郷愁」というものの仕業なのかもしれません。
激しい荒波に揺られながら町営船でたどりついた島。船着き場から少し歩くと目の前に広がっていた集落跡。
近寄る素振りを見せると身を翻して立ち去る鹿たち。小高い丘に取り残されたように建つレンガ造りの教会。
息を切らしながら歩いた片道1時間半の里道。たどり着いたのは斜面に広がるもう一つの集落跡。そしてその先に広がる紺碧の海・・・。
小値賀町野崎島。
19世紀半ば、外海地方から移住してきた潜伏キリシタンは、この島の中央部に野首集落を、南端に舟森集落を形成し、表向きは神社の氏子となってひそかに信仰を続けました。
「信徒発見」後は宣教師と接触を図り、解禁後はカトリックへ復帰。野首集落、舟森集落にそれぞれ木造の教会堂が建てられました。
しかし時代の流れとともに人口流出は続き、やがて廃村となり、今ではほぼ無人島となってしまったのです。
時が止まったようにそこに残された集落跡は、忘れつつある大切な何かを思い起こさせてくれます。
いつになるかわからないけれど、また訪れてみたい野崎島。
現在、野崎島ビジターセンターでは、潜伏キリシタンと神道の歴史をカトリック小値賀教会の収蔵品などで紹介した企画展が開かれています(10月31日まで)。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)