Vol.221
2018年10月8日 公開
秋は祭りの季節。神輿がまちに繰り出し、多彩な伝統芸能や出し物が披露されるなど、地域は活気づき一段と賑わいを見せます。
とくに今日が中日(なかび)の「長崎くんち」は380年の伝統を誇る長崎の秋の大祭。奉納踊りは国の重要無形民俗文化財に指定されています。
「くんち」は九州北部の秋祭りの呼称らしく、長崎市内では各地区で「郷(さと)くんち」があるほか、県内では平戸や佐世保、松浦などで、さらに福岡や佐賀でも「くんち」が行われています。
「くんち」の語源については、旧暦9月9日の重陽の節句に行われた「九日(くんち)」という呼び名が定着したという説や、収穫した作物を神に供える日という「供日(くにち)」から転じて「くんち」になったなど諸説があるようです。
くんちは、氏子たちがその年の収穫に感謝する祭りですが、禁教期、潜伏キリシタンの中には表向きは神社の氏子となってひそかに信仰を続けた人々もいました。
仏教寺院に所属しながら集落内にある3つの神社の氏子として振る舞った外海の大野集落の潜伏キリシタン。
沖ノ神嶋(おきのこうじま)神社の氏子となって神道への信仰を装い、自分たちの共同体を維持した小値賀町野崎島の信徒たち。
地域の守り神である﨑津諏訪(さきつすわ)神社の氏子となり庄屋役宅で絵踏を行い、あたかもキリシタンではないように振る舞ったという天草﨑津集落の人々。
彼らもきっと祭りに参加し、地域の人々とともに収穫を喜び合ったのでしょう。祭りにはすべてを乗り越えて民衆をひとつにする力がありそうですね。
これからは地域の伝統的な祭りに加え、食のイベントも目白押し。長崎のおいしい秋をぜひ満喫してください。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)