Vol.193
2018年3月26日 公開
一緒に行く同級生のお父さんが手配してくれたトラックの荷台にのって、僕ら3人は車で2時間以上かかる隣町に向かったのです。
荷台から飛び出さないように手すりにつかまり、布団袋を背にして体を沈み込ませるようにして座り、不安をかき消すかのようにずっとたわいのないことをしゃべり続けました。
もう半世紀近くも前のこと。大学に通うための一人暮らしが始まろうとしていました。
人が車の荷台に乗って移動するなど、やってはいけないことかもしれませんが、運賃が節約できるという17歳の若者たちの安易な発想がそうさせたのでした。
たどりついた下宿屋は初めて会う先輩との2人部屋。2つ年上の優しい人でしたが、慣れるまでは緊張の連続でした。
たぶん先輩も同じように気をつかってくれていたのだと思います。
そういえば18世紀末、外海から五島列島に移住した潜伏キリシタンも地元の人々とうまく折り合いをつけたり、誰も住んでいない土地を開拓したりして暮らし始めたといわれています。
見知らぬまちで新しい生活を始めるのはとても大変なこと。でもそれは成長するために与えられた一つのチャンスなのかもしれませんね。
来週はもう4月、希望を春風にのせて一歩を踏み出す季節です。
さぁ、みんな、頑張れ!
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)