Vol.192
2018年3月19日 公開
あさっては「カラー映画の日」。1951年3月21日、初めての国産総天然色映画『カルメン故郷に帰る』が公開されたことを記念して制定されたそうです。
そういえば、子どもの頃に観た総天然色映画は驚くほど色鮮やかで、ちょっと贅沢な気分になったことをおぼえています。
当時、ぼくの父は看板屋を営んでいて映画館は大事なお得意さんだったのですが、カラー映画に対してはあまり好意的ではありませんでした。
世の中にはいろんな色があり、それぞれに表情があるのに、カラー映画の色は画一的すぎて面白くない、というのがその理由でした。
その頃はカラー技術が発展途上だったので満足できるものではなかったのでしょうが、それでも酔っ払って話が盛り上がると、想像力をもっと働かせろ、と子どもたちに説くのでした。
少年時代はただうっとうしいだけだったのですが、大人になるにつれてそのことがだんだんわかるようになってきました。
例えば、禁教時代、潜伏キリシタンたちはどんな想いで追っ手から逃れる毎日を過ごしていたのでしょうか。役人たちは捕らえた彼らをどんな気持ちで拷問にかけていたのでしょうか。
史実だけでは語れない部分を埋めてくれるのはきっと想像力なのでしょう。
誰かの痛みに気づき、その人に想いを寄せる。目に見えないものを理解しようとする心が、今、私たちに求められているのかもしれません。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)