おらしょ こころ旅

Vol.191

3月の大浦天主堂

2018年3月12日 公開

その日の昼過ぎ、私たちが門の前に立っていると、神父様が急いでやってきて門をあけてくださいました。

堂内に入った私たちは聖所に向かう神父様のあとをついて行き、神父様の祈りが終わるのを待ってからこう言いました。

「ここにおります私どもはあなた様と同じ心でございます」と。

神父様は少し驚かれたようでしたが、「あなた方はどこから来たのですか」とおたずねになるので、「浦上村から来ました。浦上ではほとんどの人が私たちと同じ心を持っています」とお答えしました。

そして「サンタ・マリアの御堂はどこですか?」とおききすると、神父様は確信したようにうなずき、聖母の御像が安置されている祭壇に私たちを案内してくださったのです。

これが、1865年3月17日、大浦天主堂で起きた世界宗教史上の奇跡といわれる「信徒発見」の瞬間。プティジャン神父の書簡をもとに信徒たちの側から語るとこんな感じになるのかもしれませんね。

神父にとっての信徒発見は、浦上の人たちにとっては神父とマリア像の発見だったともいえます。

その日、信徒たちが歩いた石畳の道にはゆるやかな春の日差しが降り注いでいたのでしょうか。港からは船の汽笛が聞こえていたのでしょうか・・・。

そんなことを思いながら大浦天主堂を訪れてみませんか。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

おらしょ通信一覧
トップ