Vol.173
2017年10月30日 公開
今日は「初恋の日」。1896(明治29)年のこの日、島崎藤村が『文学界』に『初恋』の詩を発表したことにちなんで制定されたそうです。
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
『初恋』は、このフレーズから始まる四連の作品で、りんごの木の下で少女と出会った少年が初めて恋をし、成就させていく様子がみずみずしく描かれています。
この詩が発表された翌年の1897年のこと、佐世保港沖に浮かぶ黒島にフランス人宣教師マルマン神父がやってきました。
その後、彼は長崎の大工棟梁前山佐吉を呼び寄せて教会堂の建設を開始。このとき前山とともに教会建設に携わったのが五島列島宇久島出身の大工柄本庄市でした。
柄本は仏教徒だったのですが、この島の民家の改修に関わったときに住民の厚い信仰にふれて感動し、そのまま島に住みついたそうです。
教会建設に関わる2年間でさらに祈りの世界に引き込まれていった柄本は、黒島天主堂の献堂式の日に島の美しい女性を見初めて結婚。
その後は平戸の宝亀教会堂、旧紐差教会堂などの建設にも携わり後世に名を残したといわれています。
りんごの木の下で出会った少女との初恋も、教会堂の建設を通して結ばれた女性との恋もとてもロマンチックですね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)