Vol.159
2017年7月24日 公開
中学一年生のとき、小説『蜘蛛の糸』を読んで感想を述べるという国語の授業がありました。
『蜘蛛の糸』は、1918年に発表された芥川龍之介の代表的な児童文学作品。
「ある日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました」。
この冒頭部分で思い出した方もいらっしゃると思います。
過去に一度だけ林で蜘蛛の命を助けたことのある罪人カンダタ。その善行に免じて地獄から救い出してやろうとお釈迦様がさしだした一本の蜘蛛の糸。
カンダタはそれにつかまって上へ上へと昇り始めるのですが、自分のあとから昇ってくる罪人たちを見て思わず叫んでしまいます。
この糸は俺のものだ、おりろ。
その瞬間、蜘蛛の糸は切れてカンダタは再び地獄の底におちてしまったのです。
この作品は、子どもたちに何を語りかけているのでしょうか。
今日7月24日は、「河童忌」と名付けられた芥川龍之介の命日。 1927年のこの日、芥川は多量の睡眠薬を飲んで自殺しました。その枕元には一冊の聖書が置かれていたといわれています。
キリスト教に深い関心を寄せ、『煙草と悪魔』『奉教人の死』『邪宗門』『神神の微笑』など、切支丹物と呼ばれる一連の作品をのこした芥川龍之介。
どんな葛藤が彼を死に向かわせたのでしょうか。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタ)