Vol.158
2017年7月17日 公開
16世紀半ば、南蛮貿易による利益を目当てに洗礼を受けた領主たち。彼らによって集団改宗させられた民衆は、秀吉がキリスト教の禁教政策を開始すると、多くが棄教し、再び仏教へと改宗していきました。
「お殿様も棄教したし、となりの与作さんも改宗したげな」「うちらも早めに仏教徒に戻ったほうがよかとじゃなかと?」「おとがめがこわかもんね」「そうたいそうたい、そうしよう」。
こんな会話があったかどうかは定かではありませんが、潜伏して信仰を守ろうとした信徒たち以外の多くは、身の安全を考えて棄教に踏み切ったのではないかと思います。
ときの権力者にさからうのは命がけの行為。人々が次々に棄教し、仏教徒の数が増えていく中、みんなと同じようにしていれば安心。生きていくためにそう考えるは当然だったのかもしれません。
現代社会においても自分の考えとは違う意見に従わなければならない場面は数多くあります。「ま、しょうがないか」は、生きていくうえで必要な心の技術なのでしょう。
でも、大人として働く者として国民として、これだけは譲れないということもあります。自分の意志をはっきりと表明しなければならないときがあります。
それまでに自分の考えをしっかりと固めておかないといけないな。
テレビでニュースを見ながらそんなことを思う蒸し暑い夜でした。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)