Vol.14
2014年9月29日 公開
長崎市役所別館(長崎市桜町)の玄関右側にくるくるまわる丸い石があります。説明板を見ると、長崎水道創設100周年(1991年)を記念して設置されたモニュメントで石の重さは300キロ。これが台の下の細いパイプから送られた水の力で持ち上げられているそうです。
「手で押すだけで簡単に回転します」と書かれていますが、この場所を通るときはほとんどまわっているので、けっこう誰かに押されているのでしょうね。思った以上にタッチされているということは、あんがい市民に可愛がられている・・・。そう思うとなぜか安心するのです。
一方、建物に向かって左側の歩道沿いには石碑がひっそりと建っています。ここはサン・フランシスコ教会(修道院)跡。1611年、アスンシオン神父によって建設が始まったのですが、厳しい弾圧によって1614年に破壊されたそうです。その後は桜町牢が置かれ、中浦ジュリアンをはじめとした多くのキリシタンが捕らえられ、改宗を強いられたと記されています。
1569年、長崎初の教会であるトードス・オス・サントス教会が建てられて以来、長崎はキリシタンのまちとして栄え、1614年には人口2万5千人のほとんどがキリシタンだったいわれています。しかし、幕府の禁教令によって教会は次々に取り壊され、「小ローマ」といわれたまち並みは姿を消してしまったのです。
この石碑は、当時の歴史を物語る貴重な史跡のひとつ。くるくるまわる不思議な石同様、ちょっと立ち止まってタッチしてもらえたら石碑もきっと喜ぶと思います。こちらは動きませんのでご安心ください。石碑をめぐる旅はこれからもまだまだ続きます。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)