Vol.120
2016年10月17日 公開
歌うことは好きだけど、カラオケはどうも苦手でね、という人はけっこういるかもしれませんね。人前で歌うのが恥ずかしい、流行りの歌をよく知らない、そんなことが理由でしょうか。
親睦会の二次会などでカラオケに行くと、発売されたばかりの歌をまるで自分の持ち歌のように見事に歌いこなす人がいます。聞けば、一人でカラオケに行って練習するのだそうです。
時代はさかのぼって、ぼくが学生の頃は、なけなしのお金をはたいてレコードを買い、それがすり切れるまで何度も聴いて歌をおぼえたものでした。
繰り返し聴いて繰り返し歌う。歌をおぼえる方法はこれしかないのかもしれません。
平戸市生月島には、キリスト教が伝来した約450年前から口伝でつたえられてきた「唄オラショ」がのこっています。グレゴリオ聖歌がそのルーツであるといわれているこの祈りの歌は、親から子へ孫へと何代にもわたって伝承されてきました。
口伝ですから、伝える人と、聴きとる人の集中力は想像以上だったでしょうし、体の中にその歌が染み入ったときの感動は格別なものだったに違いありません。
そこまで使命感を持って歌うことはあまりないと思いますが、流行りの歌でなくても大きな声を出して歌うのは、心にも体にもとても良さそうな気がします。
今日はカラオケ文化の日だとか。歌うことは、山に登ってヤッホーと叫ぶのと同じくらい気分爽快になれそうです。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)