おらしょ こころ旅

Vol.116

歩くこと

2016年9月19日 公開

近年、健康づくりのためにジョギングやウォーキングをする人が増えています。

友人の中には、自己ベスト更新をめざして毎年マラソン大会に出場しているスポーツマンもいれば、今年はとくにご利益があるからといって四国八十八ヶ所めぐりに挑戦中のお遍路さんもいます。

ぼくにはそんな運動神経も気力もないので、とりあえず毎日自宅と会社の往復を歩くだけ。それでも今の仕事をするようになってからはずいぶん歩くようになりました。

日本の鉄道が開業したのも、海外から日本に自動車が持ち込まれたのも明治時代なので、江戸時代に目的地まで行く手段といえば、ときどき駕籠や船を使ったとしてもほとんどが徒歩だったのではないかと思います。

出島から長崎街道を通って江戸に向かった一行も駕籠や馬にのった偉い人以外はみんな歩いたでしょうし、時代劇に出てくる三度笠のお兄さんも、旅芸人一座も、ご隠居さんとお供の二人も歩いて次の宿場をめざしたのでした。

きっと日本にやってきた宣教師たちもそうだったのでしょう。

1549年、鹿児島に上陸したフランシスコ・ザビエルは、1550年の8月と9月に平戸を訪れ、10月に博多経由で山口へ。12月には岩国から海路で堺に入りました。

翌1551年は京都から堺経由で平戸に戻り、そのあと山口、大分を経て東南アジアに向かったのですが、1552年、中国で布教するため、上川島(サンシャン島)で入国する機会を待っていたときに熱病におかされ、その年の12月に亡くなってしまったのです。

厳しい暑さも寒さも険しい山道も渓谷も乗り越え、布教ひとすじに歩いた人生だったのでしょう。

最近では史跡をたずねたり、季節の自然にふれたりするイベントがたくさん開催されています。そろそろ行楽に最適な季節、のんびりとまち歩き、山歩きを楽しんでみませんか。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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