おらしょ こころ旅

Vol.114

してはいけないこと

2016年9月5日 公開

両親や祖父母から聞いた言い伝えって意外とおぼえているものですよね。

たとえば、「夜爪を切ると親の死に目に会えない」。

まだ電灯もなく夜はろうそくの明かりで暮らしていた時代は、今のような爪切りの道具もなく、目をこらしながらハサミで爪を切っていました。

これでは深爪をしたり、爪ではない部分まで切ってしまったりして危険なので、「夜に爪を切ってはいけない」としたのでしょう。

また、「夜」の「よ」と「つめ」で「世を詰める」。つまり「早死にしてしまうからだめだ」というメッセージも込められているようです。

「夜」といえば「夜口笛を吹くと蛇がくる」という言い伝えもあります。

この場合の「蛇」は「邪」の意味があるようで、夜は不気味でまがまがしいので、口笛を吹くと不吉なものを呼び寄せてしまう。だから「夜口笛を吹くのはやめなさい」ということなのです。

わが家では口笛だけでなく、ハーモニカもリコーダーも禁止でした。むしろこちらのほうが何か出てきそうですね。

先日、平戸を訪れたとき、「チチャの木」という珍しい木に出会いました。キリシタン弾圧時代に、乳飲み子を抱えた母親が役人に捕らえられ、その根元で殉教したという言い伝えのある木。その樹液は親子の血を吸って今でも赤いといわれています。

また、「おろくにん様」一家6人が殉教した根獅子の浜の「昇天石」には、「この石に登ると、海が荒れて里を飲み込んでしまう」という言い伝えがあります。

「チチャの木」を傷つけたり伐採したりしてはいけない、「昇天石」を粗末に扱ったり汚してはいけない。

二つの伝承には、殉教地を大切に守り続けてほしいと願う先人たちの想いが込められています。

「チチャの木」や「昇天石」も登場する平戸のぶらり旅は、今週9月7日から毎週水曜日、7回にわたってご紹介します。どうぞお楽しみに!

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

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