Vol.117
2016年9月26日 公開
沖縄の南で発生した台風12号が少しずつ九州北部に接近し始めた頃、わが家の郵便受けの下にクモが糸を張っていました。
それが彼らの住処なのか、餌をとるための仕掛けなのかはよくわかりませんが、とにかく台風が来るから身の安全のためにここにいようと思ったのでしょう。
しかし翌朝のぞいてみると、クモはもうそこにはいませんでした。もっと安全な場所に移動しなければと思ったのでしょうか、それとも身の危険を感じるほどの台風ではないとふんだのでしょうか。
結局、台風は九州の西の海上をゆっくりと北上し、勢力を弱めながら長崎県に接近して長崎市付近に上陸。外海地方を通過し九州の北の海上で熱帯低気圧に変わりました。
外海地方といえば、禁教期にキリシタンが潜伏した集落としても知られています。角力灘に面した丘陵地にあるため、風が強く、古くから強風をしのぐための工夫が建物に施されてきました。
屋根を低くしたレンガ造りの出津教会堂や、頑丈なド・ロ塀を使った大野教会堂、石積みの壁が印象的なバスチャン屋敷跡などがそれを物語っています。
北海道などに大きな被害をもたらしている今年の台風。とくに秋の台風は勢力が強く、日本の南海上から放物線を描くように日本付近を通過する場合が多いようです。
台風が発生したらこまめに台風情報を確認し、必要であれば早めに避難する。昆虫の動きなども見逃さないようにしたいものです。
9月26日は台風襲来の日。1954年の洞爺丸台風、1958年の狩野川台風、1959年の伊勢湾台風がこの日にやってきたことから制定されたそうです。なんだかはかり知れない自然の力を感じます。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)