Vol.109
2016年8月1日 公開
幼い頃、井戸からくみ上げた水をたらいに入れてよく行水をしました。
陽が落ちてもまだ明るい夏の宵、通りから見える庭で行水をしていると、行き交う人から「あら、よかねー」とか「大きくなったねー」と声をかけられ、ちょっと恥ずかしかったことを覚えています。
行水といってもそれは半ば遊びのようなもので、水鉄砲でそこら中に水をまき散らしたり、ブリキの金魚など水に浮かぶおもちゃをいっぱい持ち込んだり・・・。それは親の怒った声が聞こえるまで続くのでした。
行水はもともと仏教用語で、神仏に祈ったり、神事や仏事をする際に身を洗い清めることを言い、単に手を洗ったり、口をすすいだりする行為をそう呼ぶこともあったようです。
キリスト教の洗礼でも全身を水にひたすか、頭部に水を注ぐことによって罪を洗い清めるなど、水は重要な役割を担っています。
19世紀半ば、ピレネー山脈のふもとにある南フランスのルルドの洞窟から湧き出た清水で難病が治ったことから、その後世界各地につくられるようになったルルドの泉。
一方、平戸市の中江ノ島で行われている「お水取り」という儀式では、断崖の壁面から染み出てきた水を瓶にいれて持ち帰り、聖水として祀る風習があるそうです。
人間だけではなく命あるものすべてが生きていくために欠かせない水。節水はもちろん大切ですが、くれぐれも熱中症にならないよう水分補給に心がけ、楽しい夏を過ごしていただきたいと思います。
8月1日は水の日です。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)