Vol.106
2016年7月11日 公開
ひとつの部屋に何人かが居て、よく蚊に刺される人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。専門家にきくと、蚊は体温が高く二酸化炭素を多く排出している人に寄ってくるとのこと。毎日晩酌をしている私なんかは格好のターゲットなのでしょう。
昭和30年、40年代頃の蚊の対策といえば蚊帳と蚊とり線香。寝るときは部屋に蚊帳を吊り、一匹も蚊を入れないよう素早くその中に体をすべり込ませる。そして枕元に置いた豚の蚊やり器。そこから立ち上る蚊とり線香の煙も家族を守ってくれる頼もしい味方でした。
日本で本格的に蚊帳がつくられるようになったのは奈良時代。当時は貴族など上流階級の人たちが使用していましたが、その後改良が重ねられ、江戸時代になってようやく庶民に普及したそうです。
一方、蚊とり線香の製造は、アメリカからもたらされた除虫菊が国内で栽培されるようになった明治時代から。現在のような渦巻き型の蚊とり線香が誕生したのは1895(明治28)年のことだといわれています。
つまり蚊帳と蚊とり線香がセットで使われるようになったのは明治以降。それ以前の、とくに人里離れた山奥でひっそりと暮らしていた潜伏キリシタンたちにとって夏は蚊との闘いの日々でもあったのでしょう。
これからの季節は海水浴やキャンプ、野外コンサートなど、楽しいレジャーやイベントがいっぱいですが、ジカ熱やデング熱の感染源であるヒトスジシマカ(ヤブカ)に刺されないようしっかりとした対策が必要です。
長袖、長ズボンを着用して肌の露出を避ける、虫よけスプレーを使用して蚊を寄せ付けない。そして個人的にはもうひとつ、庭の草取りのときにいつも腰にぶら下げている携帯用の蚊とり線香。やっぱりこれ、効果があるんですよ。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)