Vol.104
2016年6月27日 公開
還暦を過ぎた、とくに男性のイギリス旅行といえば、ビートルズゆかりの地を訪ねる旅が人気だそうです。数年前からイギリス旅行を計画していた高校時代の友人たちも先月、リバプールとロンドンをめぐる一週間の旅に出かけました。
行く先々から届くメールには写真が添付されていて、誰が持参したのか、栗毛色の長髪のウィッグをかぶった元少年たちが、リバプールの街並みをバックに笑顔を見せていました。
ビートルズは、1962年10月のレコードデビューから1970年4月の事実上の解散まで、イギリスで12作のアルバムを発表し、そのうち11作が全英ヒットチャートで週間1位を獲得するという快挙を成し遂げました。
数あるヒット曲の中でもよく知られているものの一つに、1970年5月に発売された「LET IT BE(レット・イット・ビー)」があります。
When I find myself in times of trouble Mother Mary comes to me Speaking words of wisdom Let it be・・・
私が苦しみの中にいるとき、Mother Maryがやってきて、賢明な言葉をかけてくれた。「あるがままに」・・・
この歌詞に登場するMother Maryとはいったい誰のことなのでしょう。
一説には、「新約聖書」ルカによる福音書に「Let it be」という言葉があることから聖母マリアではないかといわれています。
もうひとつは、ポール・マッカートニーの亡き母のメアリーさんという説。彼女はカトリック教徒だったそうです。
『LET IT BE』のアルバム制作に入っていた時期、すでにメンバー4人はバラバラの状態で解散が決定的となっていました。
そんな中、悩んでいたポールの夢に母メアリーさんが現れて言葉をかけてくれた、それが「Let it be」。亡き母に聖母マリアを重ねてポールはこの詞を書いたのかもしれません。
ビートルズが初来日したのは1966年6月29日。その翌日から彼らは東京の日本武道館で5回の公演を行いました。学校をさぼってコンサートに行き、警察に補導された高校生たちは約6,500人もいたそうです。
そんな度胸もお金もなかった少年は、50年後の今、ようやく「Let it be」の境地に達したような気がします。あるがままに・・・というより、人生なるようになる! 気にしない、気にしない。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)