Vol.102
2016年6月13日 公開
そろそろ、そうめんの季節がやってきますね。暑くて食欲がないとき、のどごしがよくて“つるん”と入るそうめんは夏バテ防止の力強い味方です。
そうめんといえば、県内では島原手延べそうめんが有名ですが、長崎市外海地区にも名物そうめんがありました。その名も「ド・ロさまそうめん」。
「ド・ロさま」とは、1879年、外海地区の司祭として赴任したド・ロ神父のこと。彼は、信仰の拠点となる出津教会堂や大野教会堂を建設する一方で、貧しい生活から村民を救うためにパンやマカロニ、そうめんづくりをおしえました。
当初、原料の小麦は、神父の故郷フランスから取り寄せていましたが、のちに地元の大平開墾地で栽培するようになり、水車を備えた製粉所も建設。販売は地元での行商のほか、トーマス・グラバーなど外国商人たちも手伝っていたそうです。
ド・ロさまそうめんは、その後も外海地区の各家庭でつくられていましたが、戦後の混乱のなかでその製法は途絶え、人々の記憶から消え去ろうとしていました。
そんななか、産業振興策のひとつとして話が持ち上がったのが、ド・ロさまそうめんの復活でした。地元の人々はさっそく修道院のシスターの記憶をたよりに製造を開始。試行錯誤の末、見事に復活させたのでした。
ド・ロさまそうめんは、通常のそうめんよりも少し太く、麺を伸ばすための引き油に落花生油を使っているところに特徴があるそうです。
夏は冷やしそうめんもいいですが、パスタ風にアレンジしてスパイスを効かせて食べてもおいしそうですね。ぜひお試しください。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)