Vol.100
2016年5月30日 公開
「予言」といえば、「ノストラダムスの大予言」を思い浮かべる人が多いかもしれません。1999年7の月に恐怖の大魔王がやって来る、つまり人類が滅びるという予言に不安を感じながらただ時が過ぎるのを待っていた人もいたのでしょうね。
予言や言い伝えには不安をかきたてるものが多い印象がありますが、日本のキリシタン史には信徒たちの生きる希望につながったものもありました。
それは、厳しい禁教のなかで浦上村のキリシタンの信仰のよりどころとなった三つの伝承です。
ひとつは、七代たったら神父さまがローマから船でやってくる、二つ目は、その神父さまは独身である、三つ目は、サンタマリアの御像を持ってやってくる、というものでした。
この伝承の元となったのは、バスチャンの四つの予言だといわれています。バスチャンはジワンという神父の弟子で、ジワン神父がいなくなってからも人目を忍んで外海地方で伝道を続けていました。
彼の四つの予言は、皆を七代までわが子とする、その後は告白を聞いてくれる神父が大きな黒船でやってきて毎日でも告白ができるようになる、どこででも大声でキリシタンの歌を歌って歩けるようになる、道で異教徒とすれ違うときには相手が道を譲るようになる、という内容だったそうです。
そして、この予言を元に子から孫へと途切れることなく伝えられた三つの伝承は、1865年3月17日、大浦天主堂で浦上村の信徒とプティジャン神父が出会った「信徒発見」によって証明されたのでした。
何かを予言しそれを的中させるような力は無論ありませんが、少しでも誰かを支えたり、勇気づけたりすることができる、そんな人間になれればいいなぁと思います。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)