Vol.365
2021年7月26日 公開
夏になるとホラー映画が公開されたり、テレビで心霊番組の特集が組まれたりしますね。
怖い話を聞くと背筋がゾーっとして暑さを忘れるからということなのでしょうが、かえって身体が火照って寝付けないという人もいるかもしれません。
今日7月26日は「幽霊の日」。1825年(文政8年)のこの日、江戸の中村座で鶴屋南北作「東海道四谷怪談」が初演となったことにちなんで制定されたそうです。
四谷怪談は夫伊右衛門に毒殺されたお岩の復讐話。江戸四谷左門町のお岩稲荷に伝わる話を脚色したものだといわれています。
毒を飲まされたお岩さんの髪が抜け落ちたり、顔がただれたりするシーンを映画などで観て思わず目を伏せた人も多かったのではないかと思います。
夏が怪談の季節になったのは、歌舞伎が「涼み芝居」と称して幽霊が出る恐ろしい演目を上演したからだとか。
もともと「涼み芝居」は、農村などで行われていた民俗芸能「盆狂言」の伝統を引き継いだものといわれ、浮かばれない死霊への鎮魂のための芸能だったようです。
キリスト教の信仰が禁じられていた時代、厳しい弾圧によって多くのキリシタンが命を落としましたが、彼らの処刑を命じられた役人の中には自らが手を下したことを後悔し、亡霊の恐怖に怯えながらその後の人生を送った人もいたかもしれません。
その弾圧の舞台にもなった雲仙温泉では、この夏も「湯にも地獄の物語」というちょっと怖くて摩訶不思議なツアーが実施されるようです。興味のある方はぜひどうぞ。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)