平戸島の西海岸に広がる根獅子の浜は白砂が約1kmも続く美しい浜である。根獅子は平戸の中でも過酷な弾圧が行われたエリアだが、1992年までは組織によって儀式が行われていた。その最後の顧問役を務めたのが瀧山直視さんである。「正月近くの12月末になると、身を清めるため自宅の座敷にこもります。家族みんなとの関わりを絶ち、ひたすら無の状態で数日間を過ごすのです」。正月になれば、冷たい井戸水をかぶって身を清め、和服に下駄という姿で小山にある「ウシワキ様の井戸」でお水採りを行う。これを「水の役」と呼び、くんだ聖水を持って各家をおはらいして回るのだそうだ。「座敷、土間、庭など様々な場所でオラショを唱えながら十字を切る。大変な儀式です。家族全員の協力がなければ、儀式を守り伝えていくことはできなかったでしょう」と振り返る。